このままでは京都素通り!?

京都を通らない北陸新幹線計画は容認できません!!

【2015年8月7日0時25分初版発行】

検討中の北陸新幹線・敦賀以南3ルート

(1)米原ルート

建設費:5100億円

(2)湖西ルート

建設費:7700億円

(3)小浜(若狭)ルート

建設費:9500億円

※建設費は関西広域連合の試算による

先日、長野〜金沢間が延伸開業した北陸新幹線。現在、金沢〜敦賀(福井県)間の建設が進んでいますが、敦賀以南が未着工のまま残されており、ルートも決まっていません。ルートは与党の整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT)において、上記の3案が検討されています。

いずれの案にも一長一短があります。関西広域連合が推す(1)米原ルートですが、関西および中京への連絡には、東海道新幹線への乗り入れが前提です。しかし、列車本数が多い東海道新幹線への乗り入れは、現状では困難であり、中央リニア新幹線の東京〜大阪間全面開業まで待つ必要があります。これは、北陸と関西を最短距離で結ぶ(2)湖西ルートでも同じです。ただし、リニア実現によって、乗り入れも可能となるでしょう。

(3)小浜(若狭)ルートは、福井県若狭地域の振興を目的としたものであり、関西への短絡ルートではなく、建設費も最大となります。さらに、このルートの最大の欠点は、現京都駅を通らないことです。京都駅を通らないどころか、市街地をかすりもしない計画です。現在、京都駅には北陸特急『サンダーバード』が発着していますが、仮に小浜ルートが採用されれば、開業と同時に、京都から北陸方面への直通ができなくなるのです。加えて大きな問題は、新大阪駅にほぼ真北から進入するルートでは、人口密集地の用地買収に費用がかかりすぎるため、地下を通さざるを得なくなります。その結果、新大阪駅にて既存新幹線に接続する手段が、未来永劫失われる可能性が大きいのです。

しかしながら現在、与党PTでは、小浜(若狭)ルートを推す力が強まっています。このPTの座長を勤めるのが稲田朋美氏(衆院・福井1区)であるのに加え、ルート問題を検討する同PTの小委員会の委員長に高木毅氏(衆院・福井2区=若狭地域)が任命されることになったからです。小浜ルートを主張している福井県の選出議員が重要な地位を独占したことにより、利便性・経済性を無視した政治力で小浜(若狭)ルートに決してしまう可能性が高まっています。当初高木毅氏は、滋賀県選出議員を検討委員会から排除する意思を鮮明にしていました。小浜(若狭)ルート以外は認めない、という意味です。さすがに反対の声が噴出し、滋賀選出議員もメンバーに加わることになりましたが。

新幹線がもたらすべきものは、人的・経済的交流です。人口150万人の国際観光都市・京都を通らず、新幹線の収益にも悪影響を与えるルートなど、決してあってはならないことです。一旦レールが敷かれてしまえば、二度と京都を通すことができなくなるのです。古くから続く北陸と京都との交流を断ち切る小浜(若狭)ルートは、福井県にとってもデメリットのほうが多いはずです。実際、北陸から関西に向かう『サンダーバード』に乗車してみると、京都駅で3〜4割が下車しています。この旅客需要を無視するルートを選ぶなど、正気の沙汰ではありません。

小浜を通るルート自体を否定するものではありません。しかし私は北陸新幹線を現京都駅に通すルートを強く求めます。

上記3ルートに拘泥することなく、最大多数の最大幸福≠得られる解を冷静に検討すべきだと考えます。

中途半端な新幹線なら、建設しない方がずっとマシです。


北陸新幹線ルート試案 

※読者の方々からの提案も併せて作られました。この場をお借りして御礼申し上げます。

鯖街道ルート(仮) 小浜と京都の両方を経由
湖西ルート+米原ルート+琵琶湖若狭湾新線 北陸〜中京・関西の現行ルートを堅持して高速化 若狭への利便性も確保
フリーゲージトレイン実用化 新幹線とは独立に、実現を期待
補足 関西・北陸から東北へ 九州から北陸へ レールを分断してはならない

(1)小浜と京都駅の両方を通る鯖街道ルート(仮)

以下の(2)案が実現できない場合は、これを推奨します。意外に路線短縮効果があり、フル規格新幹線として無理のない曲線を挿入しても、米原ルートより15km以上も短縮されます。

鯖街道ルート(仮)

米原ルート:46km+68km[米原〜京都]=114km

湖西ルート

京都〜新大阪は東海道新幹線に腹付け線増(複々線化)とするか、或いは鯖街道ルート(仮)≠基本としながら、京都市街地を大深度地下で通過して現京都駅直下に北陸新幹線の駅を建設し、そのまま地下を、なるべく新大阪近くまで通し、既設新幹線と接続する案もあります。こうすれば、東海道新幹線への乗り入れに伴うダイヤや経営上の問題を回避したうえ、列車を山陽新幹線に直通運転させることも可能になります。建設費は大きくなりますが、それだけの価値はあるはずです。

(2)湖西ルート+米原ルート+琵琶湖若狭湾新線

湖西ルートは京都駅の東側で東海道新幹線へ接続し、米原ルートは米原付近で東海道新幹線に接続させます。米原付近では、東を向いた接続にします。リニアの開業を待てないのならば、京都〜新大阪、米原〜名古屋は東海道新幹線に腹付け線増(複々線化)させます。

ルートから外れた若狭地域へのアクセス向上のために、以前から計画のある琵琶湖若狭湾新線を、湖西ルートからフル規格で分岐させます。将来は、これを山陰方面へ延伸する夢につなげます。

建設資金は一番高額になるでしょう。しかし、北陸新幹線整備計画策定時の1970年代には影も形も無かった高速道路や地方空港が、その後次々と出来上がりました。自動車や航空機に比べ、圧倒的に環境特性に優れた高速鉄道は、世界中で次々と路線が延びていますが、その一方で、新幹線を産み出した日本では、新幹線延伸計画が持ち上がる度に、東京のメディアからは感情的な非難の声があがります。かように冷遇されている新幹線は建設費を抑制せざるをえず、ルートを考える際にも、知らず知らずのうちに皆が遠慮した計画を提示するようになってしまいました。しかし本来、遠慮するのが前提なのはおかしいのです。最も効果の高い案を提示するくらい許されるのではないでしょうか?

(3)フリーゲージトレイン実用化

あくまでフル規格新幹線を求める北陸沿線が固定化を嫌うフリーゲージトレイン(以下GCT)ですが、この着実な実用化が、当面現実的な案であるのは仕方がありません。最大の利点は、乗り換えがない、ということです。闇雲に北陸新幹線をフル規格で延伸させたがる政治家(敦賀以南のルート問題の早期決着をはかろうとする人、金沢から福井や敦賀までの延伸を急ぎたがる人の両方とも)は、乗り換えが大変な障壁であることを意識せず、建設だけが目的なのではないか、とすら思わせます。

在来線部分は今まで通りの130km/hしか出せませんが、新幹線部分に乗り入れて高速走行するGCTは、フル規格新幹線がすぐに延伸できない場合は極めて合理的です。現行と比較した時間短縮効果も、かなりのものがあります。

以下の表では、米原ルート=東海道新幹線に乗り換え・湖西ルート=現湖西線をGCT走行・若狭(小浜)ルート=亀岡を通過 と仮定したうえ、時間短縮効果を計算したものです。フル規格部分は260km/h走行が前提です。黄色部分は、乗り換えを伴うものです。

GCTが実現できれば、列車は関西・中京から北陸を越え、北信越或いはそれ以遠にすら乗り入れることができます。高崎程度までなら、東京経由よりも速く到達できると期待できます。京都からの時短効果をシミュレーションした結果が以下です。

問題は、技術的な課題を未だ解決できていないことです。実現を前提にして計画を立てるのは、まだ難しい状況です。


補足 関西・北陸から東北へ、九州から北陸へ

北陸新幹線といえば、北陸と首都圏、あるいは中京・関西と北陸を結ぶ観点で議論されますが、より高速走行を実現させることで、将来は関西から東北への最短ルートにすることも期待されます。京都以北をフル規格で実現させ、かつ京都〜金沢〜高崎を320km/h走行・高崎〜大宮を275km/h走行させた場合、京都〜北陸〜大宮〜仙台は、現行の東海道新幹線経由よりも早く結ぶことができます。夢のような話ですが、東京駅でレールが寸断されている東海道新幹線と東北新幹線とは違い、大宮駅で方向転換することで、そのまま乗り換え無しで結ぶことができるのです。そのシミュレーション結果です。

さらに、東海道新幹線や山陽新幹線とレールを直結させることで、列車は九州から新大阪を経て、北陸まで直通させることができるのです。

北陸新幹線は、北陸や関西・中京・首都圏だけのものではありません。レールさえつながっていれば、文字通り広汎な使い方が可能となります。だからこそ、中途半端な計画を実現させてはなりません。


ルートを巡り、様々な議論があるでしょう。しかし、拙速はいけません。早く安く大阪までつなげたいからといって、使えない新幹線≠建設してしまえば、利便性も経済性も低いという最悪の結果をもたらします。金がかかる計画なら、そのぶん時間をかければ良いのです。

新幹線に何を期待しますか?大阪まで建設することだけが目的でしょうか?それとも交流を活発化させることでしょうか?目的と手段を取り違えてはなりません。

謝辞:読者の皆様からの情報や議論で、このページを作成することができました。地図上でどのような線を描くかに限らず、建設資金捻出法について、中央リニア計画と絡めたウルトラC的な案をご提示下さった方もいらっしゃいます(資金については別の機会に紹介させていただきたいと思います)。vince様、ぽんた様、*藤様、そして私の古くからの鉄仲間の皆様に、この場を借りて御礼申し上げます。

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